建物明渡請求
1 建物明渡請求とは
 建物明渡請求とは、家賃の長期滞納者(目安として、3ヶ月〜6ヶ月程度の滞納)に対し、賃料未払いを理由として建物賃貸借契約を解除し、建物の明渡を求める手続です。一戸建てだけではなく、当然アパートやマンションの1室も建物明渡請求の対象となります。

2 敷金とは 
 最近、いわゆるゼロゼロ物件(敷金ゼロ礼金ゼロの物件)が目に付くようになりました。礼金ゼロはまだ分かりますが、敷金ゼロというのは今までの賃貸借契約では通常ありませんでした。敷金とは、主に賃借人が退去するときに、賃借人側の原因で発生した汚れや傷などを補修して原状回復するのために予め賃借人が預かっているお金です。ですから、賃借人が退去するときには、原状回復費用を天引きして賃借人に後日返還されるものです(※ハウスクリーニング、鍵の交換、畳の交換などが原状回復にあたるかは契約内容等によります)。

3 保証会社制度
 近年は賃貸人の側で保証会社を用意し、賃料の未払いがあった場合など、保証会社が補償するケースが一般的です。従って、保証会社が家賃補償してくれるケースでは、賃貸人としては家賃未納の心配は必要ないのかもしれません。なお、一昔前までは賃借人の身内や会社の上司などの個人保証人を立てるのが通常でした。

4 家賃滞納による追い出し
 通常、長期家賃滞納者を建物から退去させるには、裁判で建物明渡請求をしなければいけません。これをせずに、保証会社が家賃滞納者の賃借物件の鍵を勝手に交換して部屋に入れなくしたり、ひどい場合には無断で部屋に立ち入り、荷物を勝手に運び出して処分することもあるそうです。これは、いわゆる自力救済にあたりますが、裁判手続を経ずに無断で部屋に立ち入る行為は住居侵入罪にも該当する違法行為です。これに関しては、NEWSで紹介していますが、平成21年5月22日に大阪簡裁で不法行為に当たるという判例がでており、追い出し行為規制の法改正も進められているようです。また、このような悪質な追い出し行為は、いわゆるゼロゼロ物件に多いと言われています。

5 建物明渡請求をする目的
 建物明渡請求をするということは、とにかく最優先にすべきは建物の明渡である。建物を明け渡してもらえさえすれば、次の賃借人を入れることができるからです。もちろん未払い賃料の回収も重要ですが、長期賃料を延滞している賃借人はそう簡単に未払い賃料を支払えるはずもありません。更に、引っ越し代がないという理由で明渡ができずにいることもあります。最優先を明渡と考えるなら、未払い賃料を全額免除する。更にはある程度の引っ越し代も賃貸人側で負担して、一刻も早く明け渡してもらった方がメリットがあるとも言えるでしょう。なぜならば、建物明渡請求の裁判をし、判決が出ても任意に明渡をしない場合は、強制執行手続きによって明渡を求めなければならないからです。強制執行までするには、最低でも数ヶ月は時間がかかりますし、強制執行に必要な経費(裁判所予納金、トラックと作業員の費用、鍵屋の費用、場合によっては倉庫の手配etc)で最低でも10万円以上、場合によっては数十万円かかることもあります。

6 家賃滞納から建物明渡請求訴訟までの簡単な流れ
@未払い賃料の請求
 家賃の滞納が発生したら直ちに契約を解除し、建物の明渡を請求できるか?ですが、一般的には3ヶ月〜6ヶ月程度の滞納がないと信頼関係が破壊されたとは言えないので契約の解除はできないとされています。例えば、賃貸借契約書に「1回でも家賃を滞納した際は、直ちに建物を明け渡す・・・」という条項が入っていても、その条項自体が賃借人に一方的に不利な条項として無効とされることがあります。
 従って、後日裁判にすることも視野にいれると、最低3ヶ月の滞納が発生してから未払い賃料の請求プラス支払わなかった場合に契約を解除するという督促状を内容証明郵便で出す方が無難でしょう。ただし、未払い賃料のみの請求であれば、1ヶ月の滞納であっても適法に請求できます。
 この契約解除の内容を含む内容証明郵便が賃借人に届いてもなお期限までに未払い賃料の支払いがなければ契約解除の効力が発生します。なお、契約解除には必ずしも内容証明郵便を出す必要はなく、いきなり裁判で契約解除することもできます。しかし、悪質な賃借人は別として、いきなり裁判にすると賃借人の感情を逆なでする可能性があります。従いまして、まずは、電話や口頭、通常の手紙での督促からはじめ、それでも支払がなければ内容証明郵便による督促、それでもダメなら裁判という手順を踏んだ方が賃借人の任意の支払を期待する意味でもよいと考えます。
A訴訟提起
 内容証明郵便による督促でも未払い賃料の支払いがなく、任意の建物明渡がされない場合はいよいよ訴訟提起することになります。請求内容としては、建物明渡、未払い賃料の請求になります。なお、契約解除から建物明渡完了までの家賃分については、既に契約が解除となっているため、賃料相当額の損害金の支払を求めることになります。
B第1回口頭弁論期日
 最初の期日である第1回口頭弁論期日に賃借人(被告)が出頭すれば、裁判所が間に入って和解の話し合いがなされます。基本的には、建物明渡を前提とする和解になるので、明渡期日と未払い賃料等の支払い方法を決めて和解となります。なお、明渡後の未払い賃料等についての支払はあまり期待ができないのが一般的と思われます。未払い賃料に関しては、保証人から回収できそうなら保証人に請求した方がいいでしょう。
 期日に被告が答弁書を出さずに欠席した場合ですが、原告の提出した証拠から裁判所が原告の請求を認めてくれれば原告勝訴の判決が出ます。

7 建物明渡の強制執行
 明渡を認める判決が出た(又は明渡をする和解をしたが、明渡が履行されなかった)ときは強制執行の申立を検討します。まずは、判決が出た段階で再度賃借人に任意に明渡を求めます。さすがに判決が出ればあきらめて明け渡すことがあるからです。任意に明渡をしない場合には、判決の確定後に強制執行の申立をします。強制執行の申立には、前述のとおりかなりの経費がかかりますので、少なくとも10万円〜50万円(物件の規模や裁判所の指示等により異なる)は見ておいた方がいいでしょう。強制執行の申立をした場合、最初に執行官が現地に赴き任意の明渡を賃借人に催告します。強制執行が現実になったことで、この段階で任意に明け渡すこともあります。それでも任意の明渡をしなければ2回目に強制執行の断行をします。断行の日には、必要に応じて鍵屋、トラック及び作業員、保管倉庫などの準備が必要です。

8 賃借人が行方不明のケース
 そもそも、明渡を求める賃借人が行方不明になってしまった場合、任意の明渡は不可能です。だからといって、勝手に建物内に立ち入って遺留品を処分することは住居侵入罪等に問われますのですべきではありません。どうせ行方不明だから・・・と勝手にやってしまっても、後日賃借人が戻ってきたときには必ずトラブルになります。従いまして、行方不明のケースは裁判→強制執行と進むことになります。なお、保証人がいて、保証人に連絡がつく場合であっても、未払い賃料は保証人に請求できますが、遺留品の撤去は保証人であっても本人の承諾なしに住居に立ち入ることすらできませんので注意が必要です。


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